
アトピー性皮膚炎向けのスキンケア|乾燥させない保湿のポイントをご紹介
子どもから大人まで、痒みと湿疹を繰り返すアトピー性皮膚炎に悩む方は決して少なくありません。
本記事では、アトピー性皮膚炎の特徴を解説し、今日から実践できるスキンケアのポイントをご紹介します。
アトピー性皮膚炎とは
日本皮膚科学会では、アトピー性皮膚炎を以下のように定義しています。
”アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり,患者の多くはアトピー素因を持つ”
参照:公益社団法人日本皮膚科学会「日本皮膚科学会ガイドライン|アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」(日皮会誌:131(13),2691-2777,2021(令和 3))
つまり「良くなったり悪くなったりを繰り返す、痒みのある湿疹を主な症状とする皮膚の病気」ということです。
眠れないほどの強い痒みがあり、搔くことで湿疹が悪化するという悪循環になることが多いとされています。
アトピー性皮膚炎の湿疹は痒みのほかに以下のような特徴があります。
- カサカサと乾燥している
- 赤みがある
- ジクジクして液が出る
- ボロボロ皮がむける
- 長引くとゴワゴワ硬くなる
- 左右対称にできることが多い
また、アトピー性皮膚炎の患者さんの多くは「アトピー素因」を持つともいわれています。アトピー素因とは以下の2つの体質のことで、アトピー体質と呼ぶこともあります。
- 気管支喘息やアレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、または複数に、自分自身や家族がかかったことがある
- IgE抗体というアレルギー反応に関与する抗体を産生しやすい体質である
年代別のアトピーの症状の特徴
アトピー性皮膚炎は2歳未満の乳幼児期から学童期に発症することが多く、早ければ生後数ヵ月で症状が出ることもあります。
成長とともに症状が良くなっていくことが多いですが、中には大人になっても症状が続くケースもあります。
また、アトピー性皮膚炎は年齢によって以下のように症状が出やすい部位が異なります。
▪️2歳未満
頬や額、頭がカサカサと乾燥し、赤みが出やすいです。
痒くて掻くことで傷ができ、ジクジクして液が出る湿疹になっていきます。
さらにひどくなると、おなかや背中、手足にも広がっていきます。
▪️2~12歳
顔の湿疹は減り、かわりに首や手足の関節に湿疹ができやすくなります。
繰り返しかいてしまうため、皮膚がゴワゴワと硬くなります。
▪️13歳以上
顔や首、胸、背中など上半身に症状が強く見られる傾向がありますが、悪化する部位や症状には個人差が大きくなります。
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎を引き起こす原因としては、さまざまなものが考えられており、それらは大きく「体質的な要因」と「環境的な要因」の2つに分けられます。
体質的な要因
まず体質的な要因です。健康な皮膚には「バリア機能」が備わっていて、アレルゲン(ダニ、ハウスダスト、食物、ホコリなど)の侵入をブロックしたり、肌のうるおいを守ったりすることができます。
しかし、もともとの体質でアトピー素因を有している方は、バリア機能が低下しやすく、慢性炎症を持つという特徴があります。バリア機能が低下していると、アレルゲンが簡単に侵入できる状態になってしまいます。その結果、炎症が起こりやすく、アトピー性皮膚炎も深刻になりやすい傾向があるといえます。
環境的な要因
そして環境的な要因も挙げられます。具体的には以下のようなものが挙げられます。
- ホコリやダニ、花粉、動物の毛などのアレルゲンとなりうる要素がある環境
- 空気の乾燥や気温の上昇、ストレスや寝不足
こうした環境的な要因も、アトピー性皮膚炎を悪化させる原因であるとわかっています。
また、痒みによってひっ掻いたりこすったりといった物理的な刺激によってバリア機能が低下すると、皮膚症状は更に悪化してしまいます。
このように、アレルゲンとなりうる要素は日常の中にも潜んでおり、自身をとりまく環境と合わさることでアトピー性皮膚炎の発症や悪化につながるケースもあります。
また、アトピー素因を有している人は上記の環境要因にも反応しやすく、痒みや痛み、赤みなどが起こりやすいといわれています。その結果、バリア機能が低下しやすくなり、症状が深刻になる場合も少なくはありません。
アトピー性皮膚炎の予防法
アトピー性皮膚炎を発症しやすいアトピー体質の方は、生まれつきアレルゲンに敏感でアレルギーを起こしやすかったり、バリア機能が低下しやすくなったりします。
アトピー性皮膚炎の症状が出るのを少しでも防げるよう、次のようなことに気をつけて生活しましょう。
- 肌の乾燥に注意する
- 肌の刺激を避ける
- 肌を清潔に保つ
肌の乾燥に注意する
皮膚が乾燥すると、角層がはがれて隙間ができ、バリア機能が低下してしまいます。
バリア機能が低下すると、本来なら皮膚に入ってこないはずのアレルゲンが侵入しやすくなり、アトピー性皮膚炎を発症しやすくなってしまいます。
さらに、外からの刺激に敏感になって痒みを強く感じやすくなるため、肌を掻き、皮膚のバリア機能をさらに低下させる悪循環に陥ってしまうのです。
正しいスキンケアで肌の乾燥を防ぐとともに、湿度にも気をつけて生活しましょう。
肌への刺激を避ける
ゴシゴシこするような肌への摩擦は、皮膚のバリア機能を低下させてしまいます。
顔や体を洗うときは、素手でやさしく、こすらないよう意識して洗うようにしましょう。また、バリア機能を守るために、低刺激で皮脂を取りすぎないタイプの洗浄料を選ぶとよいでしょう。
寝ている間に無意識に肌を掻いて傷つけてしまうこともあるので、こまめに爪を切っておくことも大切です。
肌を清潔に保つ
皮膚についた汗や汚れが、痒みを引き起こすこともあります。
汗をかいたら早めにシャワーを浴びて、肌を清潔に保つことが大切です。ただし、洗いすぎは皮膚を乾燥させてしまうため、注意が必要です。
また、ホコリやカビ、ダニ、ペットの毛などのハウスダストは、アレルギー症状を起こすアレルゲンとなります。こまめな掃除と換気で、清潔な環境を心掛ける意識も大切です。
アトピー性皮膚炎の対処法
アトピー性皮膚炎の症状があるならば、まずは医療機関を受診して治療を受けましょう。
そのうえで、症状を悪化させないために意識したいポイントをご紹介します。
- 肌を掻きむしらない
- 入浴やシャワーで肌を清潔に保つ
- ストレスをためない
肌を掻きむしらない
肌が痒くて掻きむしってしまうと、バリア機能がさらに弱まり、ますます痒みが強くなるという悪循環に陥ります。
しかし、我慢できないレベルの痒みなのが、アトピー性皮膚炎のつらいところです。処方された薬をしっかり使うのと併せて、痒みの強い部分に水をかけたり、保冷剤を当てて冷やしたりして、少しでも痒みを和らげてあげましょう。
凍傷を避けるため、保冷剤を使用する場合はハンカチやガーゼで包んで使用し、長時間当てないようにしましょう。
掻きむしるのを我慢できない子どもには、手袋や保護用のストッキングをつけるなどして皮膚を保護する場合もあります。
入浴やシャワーで肌を清潔に保つ
アトピー性皮膚炎の場合、皮膚の清潔を保つようにすることが重要なポイントとされています。
入浴やシャワーの際は、お湯の温度も重要です。皮膚のバリア機能回復には38~40℃がよいとされています。
42℃以上のお湯は、皮脂や肌のうるおい成分を落とし、痒みを強めてしまいます。
ストレスをためない
ストレスを感じると痒みが強くなることがあります。その結果、湿疹を掻きむしってしまうと痒みが強くなり、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させてしまいます。
そして、症状の悪化はさらにストレスを強めてしまう悪循環を生み出すことになります。
塗り薬だけでなく、痒みを抑える飲み薬などもありますので、痒みがつらいときは医師に相談してみましょう。ストレスを完全になくすことはできませんが、うまく付き合っていく方法を一緒に考えてくれます。
アトピー性皮膚炎におけるスキンケアのポイント

アトピー性皮膚炎の治療には、「薬による治療」「悪化させる原因への対策」に加え、「スキンケア」がとても大切です。
しかし、スキンケアも正しく行わなければ十分な効果を発揮できません。ここでは、皮膚のバリア機能を守るスキンケアのポイントをご紹介します。
洗顔しすぎない
アトピー性皮膚炎の症状悪化を防ぐには、汗や汚れを落として皮膚を清潔に保つことが大切です。しかし、洗いすぎると肌のバリア機能に必要な皮脂やうるおい成分を落としすぎてしまいます。
暑い日や運動をしたときなど、日に何度もシャワーや洗顔をする場合、洗浄料を使って肌を洗うのは1日1回を目安にしましょう。
しっかり泡立てる
バリア機能を守るためには、ゴシゴシ洗いで肌に摩擦を与えないよう注意しましょう。洗浄料をしっかりと泡立てて、泡で包み込むように素手でやさしく洗います。
桃を触るようなイメージで、肌の上で泡を転がすように洗うとバリア機能を傷つけずに洗うことができます。
優しく水分を拭き取る
顔や体を洗った後、タオルを使う際にも摩擦に注意しましょう。ゴシゴシと拭くのではなく、水分を押さえるようにタオルを使うと、摩擦を抑えて肌のバリア機能を守ることができます。
また、ナイロンやポリエステルなど刺激の強い素材のタオルは避けて、綿など肌ざわりの良いものを使用しましょう。
十分に保湿する
洗顔や入浴の後の肌は、水分が十分に含まれています。そのうるおいを逃がさず保持するために、化粧水と乳液、クリームなどを使ってたっぷり保湿をしてください。
また、顔だけでなく、ボディクリームなどで身体のうるおいを保持し、みずみずしいお肌の状態を保ちましょう。
このときも肌に摩擦を与えないよう、素手でやさしく丁寧に塗ってあげることがポイントです。
また、アトピー性皮膚炎の肌は乾燥しがちです。洗顔や入浴後だけでなく、1日数回、こまめに水分と油分を補給する保湿を行いましょう。
アトピー性皮膚炎の特徴を理解して、適切なケアをしよう

アトピー性皮膚炎は、体質的な要因・環境的な要因により、肌のバリア機能が低下することで起こる場合があります。
保湿に力を入れてスキンケアを行うことで症状を軽減できる場合があるので、予防と対処法についての正しい知識を持ち、できることから始めていきましょう。

【監修者情報】
資格:
・日本医師会 認定産業医
・日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
経歴:
京都大学皮膚科在籍中。皮膚科医としての臨床業務と並行しながら大学院で基礎研究を行う。
産業医として10社以上で顧問契約中。
また、皮膚科専門医・アレルギー専門医として過去に数十本の記事監修をしている。

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